イカスミに抗がん効果

イカ墨に抗がん作用があることが発見されたキッカケは次のとおりです。青森県八戸市は、イカの水揚げが多いことで知られています。その量は年間20万トン。そこで青森県産業技術開発センターは、捨てられるイカの内臓をなんとかできないものかと考え、調べているうち、イカ墨に新しいタイプのムコ多糖を発見したのです。


ムコ多糖は糖質の一種ですが、イカスミから見つかったのはムコ多糖を含む複合糖質で、ムコ多糖・ペプチド複合体と呼ばれるものでした。そこで、この物質を詳しく調べてみたところ、がん予防に効果があることがわかったのです。それを証明したのが次の実験です。がん細胞を接種したマウスに一つのグループにはムコ多糖・ペプチド複合体を、別のグループには生理食塩水を注射して、がんの抑制効果を調べてみたのです。その結果は生理食塩水を注射していたグループは、がん細胞が増殖して、すべて2〜3週間で死亡。一方、ムコ多J糖・ペプチド複合体を注射していたグループでは、5匹のマウスが生き残りました。しかも、そのマウスたちはがん細胞が消失して、完全に治っていたのです。イカスミの「ムコ多糖ペプチド複合体」が、直接がん細胞に作用しているのではないことはわかっています。そこで、さらに研究を進めたところ、イカスミのムコ多糖・ペプチド複合体には、体が本来もっている免疫力を高めて、がんの増殖を抑える働きがあることがわかったのです。



イカ墨の抗腫瘍活性「日本栄養・食糧額会誌」よりー佐々木甚一、石田邦夫、高谷芳明、内沢秀光、松江一

イカ墨より分離したペプチドグリカンは, BALB/cマウスのMeth A腫瘍に対して64%の治癒率を示した. アセトンで脱脂したイカ墨は, 0.1%の割合でペプチドグリカンを含んでおり, その抗腫瘍活性を調べた. 脱脂イカ墨1mgを担がんマウスの腹腔内に3回注射したところ, 20%のマウスを治癒させ, また延命効果も観察された. この抗腫瘍活性は, 100℃, 10分の熱処理でも失活しなかった. 一方, アセトン抽出画分にも(1mg/匹, 3回の投与)同様の治癒効果が認められた. イカ墨は, マクロファージの喰作用を活性化したが, 腫瘍細胞に対する直接細胞毒性を示さなかった. これらのことより, 脱脂イカ墨の抗腫瘍作用は, 細胞性免疫を活性化することにより発揮されたものと推測された.


イカ墨がマクロファージの機能をパワーアップさせた。そして抗がん効果を発揮した。自然免疫の主役をになっているマクロファージ。マクロファージには、病原体やウィルスを撃退する働きと、細胞内のゴミを掃除する働きと、欠陥のある細胞を自然死に導く働き(アポトージス)があることが分かっています。沖縄地方では古くから体が弱った時に、元気が出る食品としてイカ墨が食べられていたようです。これは期待できそうに感じます。