アミノ酸とガンとヘルペス

猫の病気に伝染性鼻気管炎というのがあります。ヘルペスの感染によって起きる病気です。慢性になりやすい(鼻水や目やにが止まらなくなります)のですが、この際に治療に使われるのがリジンというアミノ酸です。これを経口的に与えることで鼻気管炎や同じ鼻かぜのカリシウィルス感染症の臨床症状をも軽減してくれます。このリジンにはアルギニンと競合して、ウィルスの複製を阻害することが細胞培養実験で証明されています。ヘルペスウィルスは、アルギニンを栄養素としており、アルギニンをたくさん含んだ食べ物を食べると再発する頻度が高くなります。リジンはアルギニンと競合することによって、ヘルペスが発症するのを抑制してくれるようです。


私の上咽頭ガンは、エプスタインバーウィルスというヘルペスの仲間による持続的な炎症が原因だとされています。他にも子宮頚ガンなど、ヘルペスの仲間の感染が原因と思われているガンは少なくありません。ガンが発症したときに、リジンを服用すれば、エプスタインバーウィルスの活動を押さえて、結果的にガンの増殖を抑えるのではないかと考えた時もありました。が、それは大きな間違いだったようです。リジンよりもアルギニンのほうを積極的に摂取すべきだったようです。


アルギニンの長期投与によって、ガンの発生数が抑制され、生存数が増加することを示す実験結果が存在します。マウス(各群150匹づつ)に、アルギニン(1日50mg/kg)またはタウリン(1日50mg/kg)を1年間経口投与する実験です。何も与えないコントロール群にくらべ、投与群は有意に実験後の生存数が増加しました。アルギニン投与群の生存数132匹、タウリン投与群の生存数122匹、コントロール群の生存数116匹。腫瘍数(悪性と良性)はアルギニン投与群で有意に減少しました。一方、タウリン投与群では良性腫瘍数のみが有意に減少しました。アルギニンとタウリンはリンパ球を活性化し免疫系を増強します。アルギニンはマクロファージを活性化し腫瘍細胞傷害性を増強します。両化合物は脂質過酸化を抑制します。これらの作用によって、アルギニンは腫瘍の発生を抑え、生存数を増加させたと考えられます。


ちなみに、リジンを多く含む食べ物は、牛肉、チーズ、鶏肉、牛乳などで、アルギニンを多く含む食べ物は、ナッツ、大豆、玄米、レーズン、エビなどと書かれてあります。このことからは、ガン患者が肉類や乳製品を避け、玄米菜食にむく理由が理解できる気がしてきました。もっとも、ぶた肉、ゼラチンなど、リジン、アルギニンの双方を含む食物も多く存在します。ネズミの寿命は約2年、そのうちの1年を使っての実験結果ですので、人間に置き換えれば、あまり期待しすぎるのも考えものです。