抗がん剤にありがとう

緑内障に対する手術に抗がん剤を使った治療があります。緑内障というのは眼の中の眼房というところに水がたまって、その圧力で視神経が圧迫を受けて壊死し、いきつくところは失明するというおそろしい病気です。原因はさまざまですが、眼圧を下げる為に眼房の中にある水が抜けるようにする排水路を作るという手術が行われます。その大きさも問題です。あまり穴が大きすぎれば、眼房水がすべて抜けてこれも視力を失くす原因となります。そして、手術であけた穴は傷が治癒することと同じで自然にふさがります。そうするともとのもくあみ、眼圧が再上昇することになります。


緑内障治療の手術のうち繊維柱体切除術では抗がん剤のフルレオウラシル(5-FU)やマイトマイシンが使用されます。この抗がん剤を使う理由は、細胞の増殖を抑制していつまでも穴が保たれるようにするためです。抗がん剤を使用することにより手術の効果は飛躍的に高まったとのことです。


緑内障に使う抗がん剤は1分から数分だけ、穴がふさがってもらいたくない組織に湿らして後は洗い流すという使われ方です。それだけのことで組織は再生しないようになるのですから、ガンの治療の場合は、そんな抗がん剤を大量に血管のなかに流し込むのですから、どうなるのかを想像してしまいます。この手術は2度、受けたことがあるのです。一度目の穴はだんだんと塞がり、2度目の手術からほぼ10年、穴はまだ開いたまま、眼圧は正常を維持している状態にあります。ありがたいことです。抗がん剤にも感謝しなければなりません。ガン細胞だけに抗がん剤を付着させればその後は増殖しない。ガンが膨らんできた先っぽだけに抗がん剤を作用させる。鼻が詰まるようになった今、そんな姑息的な手段を考えてしまうガン患者です。