モルヒネの正しい使い方

人はだれもが最後の時を迎える。私の場合はたぶんガンが原因で最後の時を迎えることになる。モルヒネに関しての知識を得ておくことは無駄にはならないだろう。モルヒネに関しては誤解をもっているひとが多い。禁断症状や依存性、寿命が縮まる、副作用が強い、昏睡を引きおこしてスパゲッティ症候群の状態になるなどなど、医師からしても、最後だからモルヒネを投与してやろうという発想がある。これらはすべて間違い。激痛に耐えながら暮らしている人と、何の痛みも感じずにおだやかに暮らしている人とでは、どちらが長生きするか想像してみる。「あなたを家で看取りたい」2003年刊 在宅ホスピス医 内藤いづみさん。・・・
モルヒネの副作用。便秘、吐き気、嘔吐、眠気、めまい。便秘はほぼ100パーセントで起きる。モルヒネを処方するときは、便秘、吐き気、嘔吐に対する予防薬を最初から一緒に処方するほうがよい。使っていくうちに吐き気や嘔吐がなければ、予防薬は徐々に減らしていく。モルヒネを使う上でやっかいなのはモルヒネの目的である痛みの緩和作用が起きる前に、副作用が起きるという点。モルヒネの量が1というレベルで痛みを緩和できるとすると、便秘はその50分の1で起きる。したがって、少ない量から始めると、痛みは全然和らがないのに、副作用だけが強く感じる患者もいる。緩和ケアでは最初は非ステロイド系の消炎剤から次にコデイン、順番を経てモルヒネが処方されるが、痛みの程度によっては、いきなりモルヒネと言う選択枝も考えられる。

投薬は経口薬が主体がよい。1日2回の徐放剤がよい。注射は血中濃度が急にあがるので、最悪の場合は昏睡状態になることも、その後、急に血中濃度が低下して、2時間ほどで痛みがぶり返すこともある。こういうことが続くとモルヒネは怖いという意識になる。医師が疼痛緩和ケアを学ぼうとしないという意識があることも、それは治すためのスキルを優先して勉強する傾向があるため。モルヒネの目的。ひとつは夜間の睡眠を確保する為。ひとつは安静時の痛みをなくすため。ひとつは体を動かしていても痛まないようにするため。

モルヒネの量は段階的に徐々に増やしていく。たとえば、最初、20ミリグラムからスタートして、効果がなければ翌日40ミリグラム、それでもだめなら3日目に60、4日目には90と増量していく。それでたとえば120ミリグラムの時点で痛みが緩和されたら、それがその人の適量になる。ガンの進行によって適量は変化するので、さらにモルヒネを段階的に増やす。2000〜3000までもありうる。支払う金額も高くなる。神経の痛み〔鋭く刺すような痛み、電気が走るような痛み、焼けるような痛み〕に対しては、モルヒネを増量しても対処できない。抗痙攣剤、抗うつ剤、抗不整脈剤が併用される。痛みを我慢せずに専門医に伝える。専門医がかならずしも緩和ケアに精通していないときもある。麻酔科医というだけで、緩和ケアの責任者になっている病院もある。

安らかで幸せな死を迎えるために書かれてある内容から、モルヒネに関しての部分を抜粋。