炎症とガンや病気との密接な関係

免疫細胞の働きが弱まると、ガンが発生しやすくなります。そこで免疫力を高めてガンに対抗するという考えが生まれます。多くのキノコに含まれるβ―グルカンはその免疫力を高めてくれる代表格の物質(多糖体)です。β―グルカンは体内のマクロファージに働きかけて免疫力を高めているのです。マクロファージを活性化するということは、免疫を高めるというよい面だけではなく、炎症を起こさせて、ガンを悪化させる危険性もあるようです。炎症反応はウィルスに犯された細胞や異常な細胞を攻撃する形で起きます。この炎症反応が顕著になったり長引くことで、炎症が正常の組織を傷害し、発ガンを促進するという原因になるのです。活性化したマクロファージは、腫瘍壊死因子(TNF)や、インターロイキン12などを合成放出します。腫瘍壊死因子は文字通りガンを殺す作用とともに、大量に産生されると悪疫質の原因となったり、腫瘍血管の新生を引き起こし、ガンを増大させます。したがって、腫瘍壊死因子はいまだにガンの治療に使われていません。


炎症によって産生されるプロスタグランディンや炎症性サイトカインはガンを悪化させることが証明されています。ガンの増殖が早いときには、組織破壊などによってガン病巣で炎症が起こっているので、炎症を悪化させる可能性のあるβ―グルカンが逆効果になる場合があるのです。


多くの炎症性疾患で腫瘍壊死因子の産生を抑制すると治療効果が上がるような病気が多く知られるようになりました。慢性関節リューマチでは腫瘍壊死因子の働きを弱める薬が病気の治療に有効であることが知られています。慢性関節リューマチには炎症性のサイトカインが深く関与していることは分かっています。炎症反応は、炎症を促進する炎症性サイトカインと炎症を抑える抗炎症性サイトカインのバランスで調節されています。ここにβ―グルカンによって活性化したマクロファージから放出される腫瘍壊死因子やインターロイキンなどの炎症性サイトカインで病気が進行することは当然のこと。そのほかにもベーチェット病クローン病潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患も病状が進行し、腫瘍壊死因子の産生を抑えることで症状改善がみられることが報告されています。腫瘍壊死因子はインスリンの働きを阻害して糖尿病を悪化させることも知られています。


福田一典著「抗がんサプリメントの正しい選び方、使い方」よりのおぼえがき。