相手をおもいやる医療

「わたしは治療することに命をかけている」と面と向かってしゃべってくる医師に出会いました。この言葉は花粉症の患者ぐらいにとどめておくべき、ガン患者に対して言うべき言葉ではないと考えます。「ガン患者の私は命を賭ける日々を送っているが、医師はどう命を賭けるつもりですか?」そう、ムキになって反論してしまいました。熱い医師、でもその情熱は自分に向けられている。


発端は免疫療法剤のピシバニールを治療に使った経験があるかどうかを尋ねたからです。「患者は薬の名前を持ち出すべきではない」 「患者は患者らしく、医師の言うことをだまって聞くべきだ」「私が病気になって患者の立場になれば、おなじように医師にしたがう」 到底、そんなようには思えない。患者の立場になっても黙って治療を受けない、自分の主張は通すとのオーラが発散していました。まだ、ガン患者と接する経験度が少ないのだろうと、患者の立場からもおもいやる気持ちが生まれました。


会計を済ますときになって、再び悲しい気持ちが起きてきます。この診察で2000円ちょいの金額を支払い、医師は7000円ほどを手にしたのです。健康保険制度。動物病院で同じようなやり取りがあれば、はたして患者さんのパートナーの方は支払ってくれるかは疑問です。さらに、治療の甲斐なくして死、もしくは病状が良化しなかった場合には、だまって支払いに応じてもらえるのだろうか、飼い主さんから言われなくても、獣医師のほうから医療費の減額を申し出るケースも多いように感じます。この点、いつも、医師はめぐまれた環境にあると感じるところです。


嫌われようとも、いやがられようとも、自分の考えはハッキリ、医師に伝える。これは、ガン患者にとっては重要なことです。