抗生物質の効かない耐性菌が増えている

抗生物質の効かない耐性菌が増えているという。それは抗生物質の乱用に原因しているという。この反省から最近は単なる風邪であれば抗生物質は処方してもらえなくなっている。その一方で感染症だと分かっている時にはキチンと服用することが患者に求められる。血液中の濃度を一定に保つ必要があるからだ。中途半端に使うことを止めれば耐性菌が増える原因になると指摘する医師は多い。しかし、こんな配慮にかかわらず、どんどん耐性菌は増えている現状がある。


抗生物質の使われ方が人間と動物の場合とでは違っているように感じる。感染症が疑われる場合は完全に体内から菌が居なくなるまで服用が求められるのが人間医療の場合だ。だいたい1週間から2週間は注射もしくは服用で投薬が行なわれる。これは個人的な経験に過ぎないが、手術後の感染予防であっても3日ぐらいは抗生物質が処方される。それに対して動物の場合はワンショットで投薬が終るケースも少なくないと思う。内臓を開けるような手術に対する感染予防の注射であっても1回が基本だと思う。これは人間よりも動物は感染に対して抵抗力が強いという説明がされているが、きっとそれだけではないと思う。これでトラブルが起きたということを耳にしたこともない。


その際に使われる抗生剤も違っている。人間用の製剤はとっくの昔に製造中止になっているような古典的な抗生物質が動物用では今でも販売されている。つまりそれを使う獣医師がいるということ。それで一定の効果が認められているということになる。テラマイシンやマイシリンゾルペニシリンストレプトマイシンの合剤)などだ。ペットの動物病院であっても、使用頻度が多いのは第一世代のセファム系の抗生剤である。動物の医療に関して、これまで耐性菌の話題が取り上げられたと耳にしたことがない。これはなぜだろう。


抗生物質で完全に菌を叩く。これでは身体に備わった免疫力の出る幕がなくなってくる。そして、抗生物質を連用するという使い方はガンという異物を排除するときに使われる抗がん剤と同様の考え方だとはガン患者としての私見だ。本来は、身体の免疫力に主に期待して、抗生物質は補助的に用いるのがベストの治療法ではないだろうかと? 菌が体の中に残っていたとしても、後は身体に備わった免疫力が働いてくれる。ただし、ときには白血球数やCRP、フィブリノーゲン値、体温そのほかの体調などもチェックして、病勢を確認することが必要になることもある。検体を採取しておのおの抗生物質に対する感受性テストをおこなうときもある。


まったくの異物であるばい菌に対抗する方法と元は身体の一部であったガン細胞に対する治療に類似性を感じる。ガン細胞が耐性を獲得する仕組みはある程度分かってきたようだ。異物を細胞の中から外へくみ出す仕組みが備わっており、それにはポンプ蛋白質がかかわっているという。抗がん剤を使えば使うほどガン細胞のなかのポンプ蛋白質の産生が増し、抗がん剤を使えば使うほど効かなくなる仕組みがあるようだ。抗生物質がだんだん効かなくなる仕組みも同じようなものではないかと考える。攻撃を受けた分だけ耐性が増す仕組みがガン細胞には備わっている。