丸山千里著「丸山ワクチンーガンを追いつめる」より

40日おきにワクチンを受取りにこられる患者のなかに、遺伝学の権威で、昭和51年度の学士院賞を受賞された名古屋大学名誉教授の山本時男博士がおいでになる。私どもの施設にこられた日には、先生みずから、すすんで説明会の講壇に立たれ、ご自分の体験を語ってくださる。山本先生は7年前に食道ガン(扁平上皮ガン)の診断をうけ、切除不能のために放射線療法をやっておられた。コバルトを照射量の限界ぎりぎりの9000単位まだかけたところで、丸山ワクチンに切り換えられた。ワクチンを打ち始めてから、みるみるうちに快方に向かい、1年5ヶ月でいちおうの快癒をみるようになった。現在すでに7年を経て再発の気配がないため、治癒したとみてよいだろう。

説明会が終っても、みんななかなか私を放そうとしてくれない。

「担当の先生が、抗がん剤もあわせて使ってみてはどうかとおっしゃるのですが、やはり断るべきでしょうか」「骨に転移しているのですが、それでも効きますか」「腹水がたまってすごく苦しむんです。なるべくとらないで治療したほうがいいんでしょうかね」それぞれの悩みや疑問を私に直接ぶつけてくる。せっかく遠方からこられた方々だ。私も時間の許す限り質問にお答えするようにしている。

そんななかで私を困惑させるのは、医師の承諾書なしに、とにかく日本医大病院を訪ねてみようと、はるばる遠くからやってこられた方がすくなくないことだ。聞けば、担当の医師が丸山ワクチンの使用を承諾してくれないというケースがほとんどなのである。患者や家族は「なんとかワクチンをいただける方法を考えてください」と訴えるのである。治療においては、医師と患者のあいだにおける信頼関係が必須の条件である。両者のあいだにトラブルが起きるのは好ましくない。私は、できるだけ担当の医師の指示に従うようにとアドバイスするほかはない。



この時代から30年ほど経た今でも状況はおなじようなもの。担当の医師が指示する治療内容が治癒率100%に近いのであれば、患者にとって断わる理由はない。ガンの治癒率が表面上、上がっているように見えるのは早期発見が可能になっているからに過ぎないと感じている。いまもって、ガンは不治の病いではないだろうか。


-