「がん患者のセックス」という視点   


なぜか早く目が覚めたときに、昨晩に見たテレビの内容を考えたりする。思い出せないが、笑った記憶だけが残っている。そうすると次に、認知症ということばが浮んでくる。病気への不安をちょっと考えただけでも、どんどん不安が増していく。ガンを宣告されたときは、次から次へと不安がおしよせてきた。どこかに心の平安をもとめたい気分だった。


「がん患者のセックス」という本があった。手にとって読む。ノンフィクションライターの長谷川まり子さんが書いたシリアスな内容の体験談だ。パートナーの男性がB細胞型濾胞性リンパ腫というガンの宣告を受けた。最初は右の顎の下にさくらんぼ大のしこりに気づいたことから始まったという。検査の結果、右ソケイ部、わきの下、胃に病巣が認められ、私の場合度と同様に5年生存率が60%と告げられたという。その後、抗がん剤による治療を受ける。入院に付き添ったときの様子がリアルに描写されている。プロが書いた文章からは、読み進むにつれて、私がガンの宣告を受けたときの感情がリアルによみがえってきた。


抗がん剤によって身体の免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる。セックスは感染を引き起こす危険性がある。その危険を冒してまでセックスする必要があるのだろうかと思う。抗がん剤によって食欲がほとんどなくなった患者にとっては、性欲は大事。人間としての存在を感じさせてくれ行為になるのかも。抗がん剤での治療を断わっている私にすれば理解できない部分だったが、本を読んでその重要性に気づかされた。セックスは愛を確かめる直接的な行為にあたる。


著者のパートナーの方は6回の治療を受け、一応の社会復帰することが出来たと、ハッピーエンドで本は締められていた。良かったね。 最新号の週間ポスト誌にも、セックスをすることで前立腺ガンのリスクは減ると書かれてあった。セックスについては、久しく考えたことがない生活をおくっている。悲しいことです。