今までに出会ったガンになった人々

わたしの選択は間違っていたのだろうか? 今までにガンにかかった知人のことが思い浮かびます。同じ獣医師のなかまでは3名。ガンがわかって治療に専念し、ちょうど1年後に仕事を再開したと聞きたあと、2ヶ月後にはあの世に旅立たれたと聞かされました。治ったと信じ込ませる。医学を学んできたものにも間違った情報を信じ込ませるにはどんなテクニックを使ったのだろうと想像してしまいます。


ひとりは胃癌の同級生。発症したのが、新しく動物病院を建てかえた直後だったので、ローンなどの心労面からの負担も死期を早めたのだろうと想像します。手術を受けて2年ほどでしょうか、旅立たれました。3人目は海外に職を求め、その前の健康診断で胃の噴門部にガンが見つかり、内視鏡で手術を受けた人。その職はキャンセルになったけれど、6年後の今日もタバコは止めず、酒も飲み、超元気に毎日を過ごしています。


「いゃ〜命拾いをしたよ〜」といって、明るく上着をめくって手術の跡を見せてくれた知人は半年後には目の前から去っていきました。ガン検診を日頃から熱心に受けていた人がいました。ガンの血筋を恐れていたのかもしれません。あるときガンがきっちり発見され、王道のガンセンターへ入院ということになりました。どういう治療を受けたかは存じませんが、1年後には旅立たれました。老齢の知人の場合は咳が止まらないことから病院に行き、肺ガンの宣告を受けました。年齢からして、治療を行わないというのも選択肢にあると医師からいわれたようです。しかし、放射線抗がん剤の治療を受けることになりました。詳しく調べたところ、脊髄に転移らしき影があり、これから半身不随、一生寝たきりの可能性があると言われたことで治療を受ける気になったようです。この人は、私より後に診断を受け、私より先に旅立たれました。亡くなった人ばかりが思い浮かびます。生還した人がふたり、一昨年と昨年、胃の全摘出手術を受けた2人です。現在、元気に仕事に復帰しています。


仕事場での骨折で病院に搬送され、その後、半年たっても仕事に出てこない。なぜ?治らないのか。1年が過ぎ、我が家に一度も帰ることなく、葬式の知らせが届きました。葬儀場で聞いた話は、入院中の検査でガンが見つかったようです。食べ物が胃に落ちていかないことで病院に出かけたと知人は食道ガンで、その場での緊急手術となりました。1年、1年半が過ぎ、仕事に復帰することもなく、葬儀場で再開することができました。もっと話し合いたかった人ばかりです。死に向うひとは、みんな寡黙です。あなた達のおかげで、現在の私がいるのです。わたしの選択は間違っていたのだろうか? 本当は、まったくそのように感じたことなど一度もありません。