唾液腺のホルモン

丸山千里著「丸山ワクチン」という本に、文化勲章受賞者で、東大名誉教授の緒方知三郎博士の論文が紹介されていた。唾液腺内分泌に関する研究で学士院恩恵賞を受けた緒方博士が発見したのが唾液腺ホルモンのパロチンである。亡くなられる直前に出された論文のタイトルは「発ガンの実相の正しい把握と、これに適合する治療対策」というもの。その論文のなかに丸山ワクチンを推奨している部分がある。「丸山ワクチンは従来の癌腫治療剤とは異なり、全く副作用のないワクチンである。これは私の理想とする内発性感染症に適合する免疫療法で、体力を高め、ガン細胞の集団を囲む生理的の結合組織(ガン基質)にガン細胞に対する防御的な反応をおこさしめ、これによってガン細胞に障害を与えんとするものである」


緒方論文によると、発ガンの過程は4つの病期にわかれる。胚葉系に属する上皮組織と間葉系に属する結合組織がおたがいにバランスがとれている状態であれば問題はない。年老いて老化が加わることで結合組織が弱まり、徐々に上皮組織の増生力のほうがまさっていく、そこに一気に上皮組織がガン化することでガンが発症する。パロチンが欠乏することで結合組織の正常な機能が弱まっている。この時期にパロチンを補給してやると老化を防止することができ、発ガンも抑制される。ガンは唯一つの細胞がガン化するのではなく、ある時期において集団で一気に増生する。その上皮細胞は細胞質の大きさが小さくなり、なかの核も不正形を示すものが多くなる。ガン細胞を手術によってとりだしてみると蜂の巣のような構造になっている。蜂の巣状の穴を作っているのは基質と呼ばれ結合組織から成り立っている。ガン細胞はその穴のなかにまるでハチの幼虫のように入っている。この状態に至ると、直接にガン細胞に作用して死滅させる化学薬剤は使用すべきではない。ハチの巣のなかにいるガン細胞はもちろんのこと、それをとりかこむ壁をも破壊してしまうからである。であるから、この場合には患者の結合組織の抵抗力を高め、2次的にガン細胞の死滅をはかる免疫療法をとるべきだと主張した。


以前に脱会する会員が少ないことで知られている、ガン患者団体「いずみの会」の会長の講演を聞いたことがあります。まずガン患者が実践すべきことは玄米菜食など食生活の改善。そのつぎに重要なことはよく噛んで食べることだという。食物を唾液と混ぜ合わせることにより、食物中に含まれる発ガン物質や毒素を消してくれる。口腔内のガンや私のような上咽頭ガンでは、放射線治療が併用されることを考える。唾液腺にも放射線がかかり、たいがいの場合に唾液が出にくくなるような影響を受けることになる。唾液腺(耳下腺)からパロチンの分泌が促進され、それがガンに対抗してくれていると考えれば、この部位のガンが治りにくい理由に納得がいく。