ガン陽子線治療施設はもう要らない

名古屋市の河村市長が採算性を疑問視して一時凍結した陽子線治療施設に関するニュースが今日の新聞に載せられていた。同施設は前市長が進めたプロジェクトのひとつだったが河村市長が「医療費が高く、利用者は想定の半分程度。毎年数億円の赤字が出る」と計画を凍結。その後、公開討論会を開いたところ、建設を求める意見が大半だったことなどから方針を撤回、約4ヶ月後れで着工。開業時期が13年春にずれこんでいた。その後、建設を請け負った日立製作所が着工遅れによる追加費用4億8600万円を名古屋市に請求していることが6月9日にわかったという内容です。


名古屋市の河村市長の迷走が新たな財政負担の問題に発展。建設を推進してきた自民党市議団の横井利明団長は「市役所内で一時凍結を主張したのは河村市長だ。税金で追加負担をすることに、市民の理解が得られるとは思えず、市長が負担すべきだ」と話した。一方、ガン患者をサポートするNPO法人「ミーネット」の花井美紀代表は、「市長は患者の利益を考えずに一時凍結したことで治療の開始が遅れ、施設に期待をいだいてきた患者に背いた。不払いで、治療開始がこれ以上遅れることは絶対に避けてほしい」と話している。これは新聞記事から。


最新式のガン治療施設が建設されるというのは好ましいこと。健常者からすれば費用以外の点について反対する理由がない。総事業費245億円、名古屋市の負担する額も巨額であることが想像できる。一方、利益をうけるガン患者は名古屋市民だけではない。建設費と運営費のうちどの程度が患者負担となるのだろうか。もとより健康保険の対象になっていない治療法であり、患者負担は300万円程度と高額治療になる。この金額を捻出できる患者だけがこの治療を受けることが出来る。


いったい一時凍結したことで不利益を受けた患者はどれくらいいるのだろうか。躊躇していれば進行して死に至るというガンという病気。全国にある同様の施設は予約で一杯の状況なのだろうか。以前のブログにも記したこと。この治療法を受けるためには原則3つの条件が必要になるという。一つは過去に放射線治療を受けていないこと。二つ目は他に治癒率が高い治療法がないこと、そして三つ目に、ガンの遠隔転移が認められないこと。この条件に適応するガン患者はどれほどいるのだろうか、すでに放射線治療を受けている人がほとんどだと思う理由はそれが保険適応の標準治療だから。恩恵をこうむる患者は少ないのでは? さらに当時の新聞記事によると名古屋市には別の民間治療施設が建設される計画があったようだ。


ガン患者であり、そのガンによって死亡した衆議院議員・故山本孝史議員がいる。ガン対策基本法の早期成立に努力した。「救える命のために」という著作のなかで、このような施設を作る方向性に疑問を呈していた。ガン患者のためにすべきことは他にもっとあるのではという主張だった。きわめて高額のガン医療器械を設置することで利益を得るのはだれであろうか。300万円と言う金額はその気になれば都合できそうにも思える金額。300万円と命とどちらが大事かとガン患者が葛藤する気持ちをきっと健常者の方々にとっては理解できないだろうと思う。民間の施設が建設される計画があったのであれば、なぜ民間に任せておかなかったのだろうか?